ロープウェイ

技術職員のおくださんと、雪解けサイトの樹冠部にロープウェイを設置しにいってきました。



成木の葉を定期的にサンプリングするためです。2つの大きな木にロープを張って原理的にはチロリアンブリッジ。
こんな事もあろうかとクライミングの練習しておきました。



ぶらーん。
重量級の自分で大丈夫ということは他の人でも安全でしょう。
こんなときのために、体重増やしておきました。



上から見ると、サイトの様子も違って見えます。

まだ、試験的に一カ所設置したのみですがいい感じ。
この夏をかけて全サイトにロープをかけます。攀じ攀じ。
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Bayreuth (バイロイト)

物質循環に関する学会"BIOGEOMON2014"に参加するためドイツはバイロイトにいっていました。 



朝晩は肌寒いですが、日中は高緯度なので日差しが強かったです。
バイロイトは適度に小さく歴史的な建物があり、落ち着きのある街。年に一度開かれるバイロイト音楽祭は相当有名で、地元の人でも7年待たないとチケットがとれないほどらしい。



学会では「これでもか」と言うくらいぶしつじゅんかんな研究を聞きました。正直、頭の中がまだ整理できていませんが、冬の気候変動、細根と土壌炭素動態、リター分解と土壌動物、植物や土壌微生物の機能的多様性と物質循環など、自分が興味を持っている”かなりspecific”なテーマに関して研究の動向を感じる事ができるほどまとまった話がきけ、色々なアイデアを得ることができました。
 


エクスカージョンでは、草原の多様性—生態系機能研究で有名なJena Experimentのサイトを訪れました。
 
広大な面積にきれいに配置された無数の実験植物群集が圧巻であるとともに、その中の一部を切り取って始められている操作実験も興味深いものばかりでした。



いや、正確に言えば、操作実験のコンセプト自体はありふれたものも多かったですが、それをどんなことに留意しながら(どの辺は手を抜きながら)実施しているのかを実際にみることができて(特にハード面)、参考になりました。また、欧州各国から数十人単位で学生が集まりテント泊をしながら草取りバイトをしている様子もすごかったです。
 
Jena Experimentの後には、BioTREEというプロジェクトが行われているサイトの1つに行きました。
 


これまで世界的にも植物の多様性—さまざまな生態系機能(Biodiversity – Ecosystem Function; BEF)に関する実験的研究がされてきたが、その多くは草本群集を対象としたもの。
パターン解析からでは同定しにくい因果関係の部分を明らかにするには、土地の履歴がはっきりしている場所で多様性の異なる植物群集を成立させて研究に用いる手法が有効です。しかし「植物」と行っても寿命の短いものから長いものまで色々いる。樹木はその中でも寿命が長いグループで、その反応や生態系機能との関係を包括的に見たいのであれば、長い時間かけて育てて群集を作る必要があります。それをやっているのがこのプロジェクト。同様のプロジェクトは中国などでも行われていることは知っていましたが、実際にサイトに行くのは初めてでした。
 
ようやく樹冠が閉鎖し、これから色々なプロジェクトがようやくはじまるところとの事。印象的だったのは、連れて行ってくれたScherer-Lorenzenさんがさらっと口にした「きっと、この木達を測るのは、僕たちの子供か、孫だろうねJ」という言葉。

心に響きました。
 
国内でも多くの研究者の貢献で、長期生態学的研究(LTER)の機運が高まり、観測ベースの研究についてフォーマットが整い始めている(私自身は、全く貢献していないのだけど)。一方、不知を承知で書かせていただければ、実験生態学的な研究を長期的な視点で行っている例は、森林関係では少ないのではないのでしょうか。
 
キャリアの駆け出しである一方、比較的、時間が残されているのも自分たちの世代。
森を扱っている自分たちだからこそ、少し巨視的な視点でみたプロジェクトについて考えなければならないのでは、と思いました。
 
学会の後には、Bayreuth大学で学位を取ったChangさんと同大学の技術職員であるHellさんの案内で、同大学の土壌生態学研究室やバイロイトから少し離れたところにある研究サイトを見学させてもらいました。
 






相変わらずヨーロッパの実験室は効率的な作業に向けてよく作られていて、中川研究林にも取り入れたいシステムがいくつかあった。また、Hellさん自作の様々な観測機器をみせていただけたことも大きな収穫だった。こうした細かいところは論文には出てこないが、実際にデータを取る効率やその確度を高める上で重要で、研究の成否を左右する。
 


フィールドの後には、Uweさんのお宅でお茶をごちそうになったりと交流を深める事ができた。Danke!


 
終わりに…期間を通じてビールとソーセージを堪能しました。
もう、しばらくいいかな、と思うくらいに...





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冬の気候変動に関する研究論文の特集

Ecological Research誌7月号において冬の気候変動に関する研究の特集が組まれました。
(詳細はこちらをクリック
5本の総説、3本の原著論文からなっています。

論文の多くは1年半前に日本生態学会静岡大会での発表がもとになっていますが、他に国内外の第一線で活躍する研究者たちからも投稿があり、充実したものになりました。

序論にも書きましたが、冬期の生物活性はまだまだ夏のそれに比べて不明点が多いのが現状です。環境変動による影響を受けやすいとされる山岳地や北方林、ツンドラなどの生物活動は「冬の低温」に大きく規定されています。それらのバイオームの果たす炭素固定などの生態系機能の重要さを考えれば、冬の気候変動に関する研究はますますその重要さを増していくでしょう。

冬は時間的なニッチにもなっています。競争者の少ない冬に資源利用をしている生き物、その生物に食物連鎖を通じて関係しながらも夏に主な活動期がある生物がいることが示されるなど、ますます夏との関係を切り離して考える事が難しくなっています。

先日まで、BIOGEOMONという学会に参加するためにドイツのバイロイトに行っていました。学会中、今回の特集論文の著者と話す機会があったのですが「どういう訳か冬の気候変動に関する研究が減ってきている」というのです。私は、その原因の一つに「雪の中で植物や土壌を研究する」ことをイメージしにくいこともあると思っています。

この特集では研究サイトの写真も掲載するなど、読者に「冬の気候変動研究」を身近に感じてもらえるような工夫も試みています。「今、どこまでわかっているのか?」ー総説による現状把握、最新の成果とともに多くの方に「未知数の多い冬」の魅力を感じていただき、同分野の発展の一助になればと思います。

最後に、本特集の実現にご尽力いただいた著者、ご多忙な中時間を割いてくださった多くの査読者、そして編集者の方々に厚く御礼を申し上げます。

ありがとうございました。

大仕事が一つ、終わりました。

さて、次は原著論文。おもろい研究します。

Say "Winter!"

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初夏

山菜の時期も一昔前。


↑こっちでいうタケノコ。チシマザサのササの子。丸焼きにして皮剥いてマヨネーズで食べる。激旨し。

雑草だらけの庭に植えっぱなしだったレタスが、いつの間にか食べ頃になっていた。
日に日に冷たい飲み物を買う機会が多くなって、でも長袖のシャツは手放せない、そんな音威子府の初夏。

気づいたら一ヶ月半ぶりの書き込み。
書くことがなかったのではなく、書くことが多すぎてタイミングを逸し続けていた。
このままだとどんどん時間が過ぎてしまうので、まとまりのない文章を徒然に。

何をしてたのか?

いろいろあったけど、何と言っても雪解け実験サイトの立ち上げ、設置ばかりしていた。



当初の予定通りにいかないこと、考えきれていなかったことが多くてなかなか苦戦。

その度に、考え、悩んで、選んで、決めて、そんな日々だった。
"勝負どき"だと思えば思うほど、選ぶこと、決めることが難しいということを改めて痛感した。

天塩の高木さん、沢山の技術スタッフのおかげで、めちゃ格好いいサイトができつつある。

ミーハーだけど"サイトの格好よさ"は、研究を進める上でかなり大事。悩んだ分だけ納得の行くサイトができていて、『とことんやったるで』と思わせてくれる。

いつの間にか日本代表も負けちゃったけど、椎名林檎のNIPPONを聞いてノリノリになって、
現在進行中で作って、試験的な測定をしてます。



さて、知床にもいってきました。
昨年に引き続き、シカによる植生の食害が土壌窒素循環に及ぼす影響を調べています。


↑柵の左にはシカが入れない。シカによって林床植生が壊滅状態なのがわかる。

今年は、論文化に向けて取り損ねていたデータを補完しに何度か訪れる予定。

ちなみに昨年のデータをもとに、来週から、ドイツのバイロイトで開かれる物質循環系の学会(BIOGEOMON 2014)で発表します。面白い結果も出ているし、物質循環に特化した学会も初めてだし、世界各地の友人たちとも会えるしのでパブで一杯やるのが楽しみ。

知床の帰りには、九大の足寄演習林へお邪魔させていただく。



林長の久米さんに、火入れを予定しているヤマナラシ林やいろいろな試験林を見せていただく。

よく手入れされたカラマツ老齢林、ほぼ手つかずの低地の原生林をみせていただいたのには感動した。
これまで日高山脈や平地のど真ん中にあるミズナラの単純林ばっかりみて植え付けていた"十勝の森"のイメージがかわった。



足寄からネップへの帰り道、三国峠から雲海に浮かぶ東大雪が見えて無性に山に登りたくなった。



さて、気づいたら一ヶ月半。

岩にも山にもあまりいけてないが、一度、かっつん&あすきちゃんと初めての西岩峡へ連れて行ってもらった。
川沿いの気持ちのよい岩場は貸し切りで、のんびりクライミング。狙っていた『グレート本郷11a/b』を登ることができたのは成果だった。なかなか『最高グレード更新』とは行かないけど、今は致し方ないと思う。そんな風に思った方がいいときもある。





個々の問題に対処するテクニカルな事ばかりではなく、もっと大枠、方針に関わるようなことを思った...思いかけたけど、
それをきっちり振り返らないまま走ってきたら少しリズムが乱れてきた。

一度、ここらで見直す時間をとって、改めて動き出したいと思う、そんなこの頃。
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北海道北部を拠点に森林の研究をしている小林真があちこち歩き回って考えたこと・見たものを紹介するページです。 Keyword: 樹、土、ミミズ、北方林、ツンドラ、バオバブ、登山
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