冬を迎える

 
夜、家への帰り、冷たい雨が降るなーと思っていたら、
翌朝、山を見てみると雪が積もっていました。

村に唯一あるスーパーマーケットは、営業時間を8時から6時に短縮。

奇跡的においしい日帰りランチバイキングが楽しめていたレストランも、
今週末をもって一旦閉店。再開は12月頭、オーロラ目当ての観光客が沢山来る時期。

世界のあちこちから来ていた研究者たちもそれぞれのProjectを終えて家路につきはじめ、
いよいよAbiskoは冬を迎えます。

また来年もこいよー、といって
送り出す立場というのも、なんだか少し得意げ。

研究室から外を見ると、空は澄んでいるようだけど
今日は満月。明るくって、オーロラは見えにくいかな。

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白いオーロラをみた週

 
アラスカから帰ってきて、一週間。
あっという間のようで、色々なことがあった一週間。

まず、なんといっても、生まれてはじめてオーロラを見た。

はじめてのオーロラは、ぼやっとしていて、
白くて、雲と見分けがつかなかった。

ちょうどその夜、日本から来ていた森林研究者兼クライマーご夫妻と一緒に飲んでいて、
その合間に、外に出て『あれが、オーロラだよ』と教えていただいた。

そういえば何年か前、美瑛に住んでいるワンゲルの先輩が

『アラスカで秋に見えるオーロラは白いんだって』

と言っていたのを思い出す。

奥様は名うての雨女らしいが、滞在中は"奇跡的"に天気に恵まれ、
気持ちのよい秋晴れの中、
Abisko周辺の森やツンドラを見て回ることができた。





日本にいたときに "ツンドラの秋" といわれて想像したのは、
一面赤い絨毯が広がっているけど、なんだか景色すべてが灰色がかっていて、
壮大だけど、少し、もの寂しい雰囲気の場所だった。

だけど実際は、足を置く場所も、見下ろす大地も、うきうきするぐらい色鮮やか。

赤く染まるウラシマツツジやヒメカンバの絨毯の上に

淡い黄色やところどころ白っぽくなったヤナギの葉がアクセントになって、
大げさではなく、花畑かと思うほどだ。



- 研究編−

仕事もぼちぼち忙しめの一週間。

10月にこれまでとは違うプロジェクトで極東ロシアに行くことになり、その準備に追われつつ、
返ってきた論文の修正、フィールド調査の締め、
冬の間、研究所の温室で始める実験の立ち上げ。。

しかもこの短期間に、面白いセミナーを2つ聞くことができた。
ここAbiskoには、世界中から植物生態学者が調査などのためにやってくる。

先週は、幸運にもちょうど調査や実習のために来ていたビックな2人がセミナーをしてくれた。
1人目はオランダからきたDr. Hans Cornelissen。
2人目は、ウメオのDr. David Wardle。

2人とも植物・森林生態学の分野で論文の生産力が高く、かつCreativeな研究をしている方で
話のキーワードは共に植物のFunctional Traits。

これまで、ざっくり言ってしまえばに 『種の数』 を指標として 『多様性』 を数字にして、
炭素蓄積量など生態系内のプロセスと関係をみようという研究が多くなされてきた(と思う)。

一方で、単純な、種の数を単位とした多様性ではなく、
ある形質の機能的な特徴が似た種を1グループにして(例えば光合成速度、葉の厚さだとか分解のされやすさ、成分など)、そのグループの多様性といろいろなものの関係を評価する動きがある。

いろいろな生態系の機能との関係性を見たときに、
種を単位とした多様性よりもこの機能面での特徴(Functional Trait)がにたグループを単位とした多様性のほうが、いろいろ説明がつきやすいことがあるとという研究例を色々紹介してくれた。

さて、Functional Traitという枠を、自分の研究にも取り入れるべきか。

ただ、どうせ手を出すなら、
トピックとして、流行っているからとりあえず計ってパラメータとするのではなく、
Functional Traitという 『くくり』 ・ 『わく』 を作ることではじめて見えてくるもの、
新たにでてくる検討すべきことをやるべきだと思う。

流行のキーワード同士をくっつけて、
やったら面白そうなことは、言葉遊びのようにいくらでも浮かぶ。

でも、それじゃただ、目の前にぶら下がったキャッチーな面白そうなテーマにつられて
脱線して行っているだけな気がする。

そういうのに手を出して、論文にしていくのも正直大事なんだろうけど、
今、自分が考えるべきは、
そういった知見を、どうやったら応用研究につなげることができるか…ということ。

いろんなことを、あーでもないこうでもないと妄想したり議論するのは面白いけど
それだけじゃなくって、
どこか応用的な場所に着地点・落としどころ見すえながら、手をつけたい。

ヤジロベーみたいに上手くバランスとりたいなー。

さてさて。
さてさて。
さてさてー。

2人とは朝のコーヒータイムやフィールドでも色々話すことができてとっても勉強になった。
気さくだし、ああいう雰囲気の研究者になりたいなーと思う。

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ここ数日の間でも、季節は進み
我が家のベランダからでも、緑色のオーロラも見えるようになった。

今日はカーテンのように動くのもはっきりと見ることができた。

近々、オーロラの写真でものっけます。
オーロラを見ながら一杯やりたい方は、是非、お酒持参で北極圏のあご家までお越しください。
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静かな秋、大きな秋

 
帰国した翌日は土曜日、晴れ。

Swedenに来て3ヶ月と少しが経ち、ようやく自分のアパートに引っ越すことができた。
如何せんここは人口・85人の村。
アパート自体が限られているので、空きがでるのを待っていた。

建物は二階建ての小さなもの−といっても、ここアビスコでは大きいほう。
僕が住むのはその二階で、窓からはTornetraskの湖や、Lapportenなどの山々が見える。

間取りは2DK+大きい収納部屋。
ちょびっとリッチになった気分だが、さすが僻地、家賃は驚くほど安い。



これまで仮住まいをしていた研究所の宿舎から荷物を運んだが、
研究所のワゴンを使ったら思いのほか早く終わってしまった。
午後4時。

日が短くなったとはいえ、まだしばらく明るそうだ。
天気もいいし、コーヒーを魔法瓶に入れ、カメラと文庫本をもって、
近くの丘まで少し散歩に出る。

Abiskoに生えている主な木はカンバやポプラの類なので、
ほとんどが黄色く色づく。
しかし、よく見てみると中には赤く染まるものもある。

お気に入りになっている丘は、新居から歩いて1時間ほど。
Alaskaにいるときから、秋の間中に一度は行こうと考えていた場所。

頂上からはAbiskoの村やTornetraskの湖、そして村の周りの山々が
下から見るよりもよく見えるし、途中には小さな池もある。





眺めと座り心地のいい岩場に腰をかけ、一人、のんびりと写真を撮ったり、本を読んですごす。







日が沈み始めると、一面の黄色い木々が、少し赤みを帯びてくる。

大きな秋。
その静けさに、ふーっと一息。



いつ、どこから貯めていたのかわからないけど、
だいぶ貯まっていたような大きな息。

こんなに静かに秋を感じるのは、はじめてかもしれないな 
などと思いながら、来た道をのんびり帰る。



Abiskoは今、秋、真っ只中です。
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アラスカ調査終了

 
無事にAlaskaでの野外調査を終え、
Sweden
へ帰る途中、シカゴで5時間の飛行機待ち中。
日本以外の国に『帰る』というのははじめてで、なんだか不思議な気分。



調査中は、雨にも降られたが、それほどひどくはならず、
晴れ間には海を挟んで対岸にあるアラスカ半島の山々を見ることもできた。



ブラックスプルースとホワイトスプルースの混交する常緑の森に
ポプラやカンバが黄色いアクセントを加えて、秋真っ盛りの中で調査。

といっても,山火事屋さんの僕は、主に燃えたあとの森が仕事場なので
綺麗な森はいつも横目で見るだけだけど。



↑山火事跡地。炭だらけ。

肝心の仕事は、納得のいくものができた。

はじめは『これまでのデータの補完』という保守的な作戦で望む予定だったけど、現地を改めて見返してみれば、想定していたように単純化できないこと&
面白そうなことが多く、それらを調べていたら
予定よりしんどい調査になってしまった。

でもお陰で、膨大な野帳のデータの打ち込み&未分析のサンプルを分析すれば、かなり面白いことが言えそうで、今からわくわくしている。

僕たちのチームは、虫害の専門家とリモセンの専門家、そこに山火事担当として自分が混ぜていただいた3人という小さいものだが、
このProjectの
3年間、それぞれの専門を上手く出し合った、
いい仕事ができたと思う。

異分野の方と、調査中はもとより、へとへとになった調査後も、
毎晩遅くまで、
現場で見えている虫害、山火事、それぞれのプロセスの解釈やリモセンを使ったスケールアップについて議論をし、
調査項目や実験設計の細かい軌道修正をしながら調査をした。

現地にいってみないとわからない
というのは、時に場当たり的な研究をする言い訳にもなると思うが、
でも実際、そういうもん。

現場で、『机上で考えていたことと違うぞ?』と思ったときに
事前に決め付けていた解釈にとらわれないで、
目の前のものが何者なのかを必死で再考する。
でも、ずっと考えていることもできないので一旦、解釈に結論をつけて、
やるべきことを決断をし、
調査を進めていくということを行うことが多々あった。


海外への短期調査では、使える時間も限られ
その場所に繰り返し訪れるということが困難な場合が多いため、
この『現場をみる目』
その場で適宜、軌道修正し、進めていく『決める力』、
そして、それを、ある程度の時間の感覚でこなしていく『瞬発力』
のようなものが重要になってくると思う。

このプロジェクトに参加させていただいたことで
この点について大分、鍛えられた。


また、それぞれ、別の分野についても、単語の意味の理解から、
基本的な研究の進め方まで、知識レベル+αで学ぶことができ
自分の幅も広がったと思う。



↑一面、灰色に見えるのはSpruce Bark Beetleという虫によって殺されてしまった
エゾマツの仲間たち。こんな場所で山火事が起きると炭素動態どうなっちゃうの?
というのを3年間調べた。

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さてさて、23日にAbiskoをたって18日間続いた地球一周・時計回りの旅も
いよいよ終わり。

何でまた、よりによって時差ぼけが出やすい、東回りになっちゃったかな

パソコンに表示されてる時間は東京時間
頭の基準はストックホルム時間
腕時計はそれぞれの場所の時間

東京やストックホルムの基準時間と各地の時間の差が
はじめは僕にひどい時差ぼけをもたらした。


しかし、こうも、短い間に、あわせるべき時間が、あれこれ変わると、
徐々に、基準がどこなのか、頭でわからなくなり
時差ぼけを感じなくなったからミステリー。

慢性的に少し気持ち悪い状態が続いているけど
体内時計の狂いによって予想外の時間に猛烈に眠気が襲うということは
なくなったように思う。


さて、週末は身の回りの整理をしつつ、ひと休み。

来週から、またエンジン全開で
Abiskoでの研究を再開したいと思います。
今度は、じっくり、どっぷり向き合う方の研究。

北極圏は、きっともう秋真っ只中。
そろそろオーロラも見え始めるころだろうか。


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アンカレッジ、秋

 
朝、少し早めに出発し、人生で初めての霞ヶ関へ。
大学の同期や山仲間たちとランチを一緒にする。



一緒に酒を飲んで、遊んでいた連中が、
今、日本の中心で、社会を動かしている。

方や、世界の端っこーの方で、
一人でえっちらおっちら穴を掘り、木を刈って、
世界ではじめて自分が言えそうなことを、あーでもない、こーでもないと模索中。

いろんな人生あるもんだ、と他人事のように思うけど、
いつまでも、お互いの存在を意識し・させ合いながら、生きていく友達でいてくれたら。



アラスカへの旅は、そんな気持ちが出発点。
オフィス前の廊下で手を振って別れる。

朝は霞ヶ関にいたというのに、あれやこれやといううちに
気づけばシアトル。
この移動量に、そろそろ体も感覚も馬鹿になってきた。
空港から見る通称タコマ富士、Mt. レーニアが綺麗。

さらに乗り継いで、4時間、爆睡している間にアンカレッジに到着。

街の木々は少しだけ、色あせはじめたところ
空は秋晴れ。

また、北の森に帰ってきた。

いつものスーパーで食料品の買出し、
最終打ち合わせ、
一杯ひっかけて、

明日から、調査地のあるキーナイ半島へ。
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帰る場所

 
8月30日から9月2日まで、いよいよ始まるアラスカ調査の直前打ち合わせや準備をするため
日本に滞在中。

東京は予想通りのうだるような猛暑であるが、
今年、暑い夏というものを経験しなかった僕の中では、
しんどさよりも懐かしいといった感情が勝っている。

道々の風景を前に、シャッターを押してしまう。







まだ3ヶ月しか離れていないのにそんなに懐かしいか?と疑問に思うけど
よくよく考えてみると、
この10年ほど、夏の間は調査や山に登りっきりで、ここ茨城に帰ってきたことがなかった。
それが、懐かしさを助長しているんだろう。

かつて歩いていた場所に、
何千キロも離れたAbiskoという村からやってきて、
また、今や昔、これからのことを考えたりしている。









人っ子一人いないツンドラと、スーツを着た人であふれる街、
夕日に赤く染まる稲刈り時期の田んぼと、同じように赤く染まる北極圏の山々

それらの景色やそこで生まれる感情が
自分という一人の人間を通じて連続的につながっているということが不思議だ。

沢山の風景の間を歩き回り、
つなぎながら、
僕は何を考え、生きていくのだろう。

そんな質問を、少し他人事のように自分に投げかけ、人生というものの面白さを思う。
忙しい中、思いっきり一緒に飲んでくれた選手、も、うに、かす、まる、いおり、きわむありがとう。

友達が沢山いるのを感じれる瞬間も
この国は僕の帰ってくる国だな、と思わせてくれる大事な時。

そしていくらネットで連絡が簡単に取れるといっても、やはり自分は遠い場所にいて
今は勝負の時なのだなと、改めて思わせてくれた。

See you again, JAPAN.











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北海道北部を拠点に森林の研究をしている小林真があちこち歩き回って考えたこと・見たものを紹介するページです。 Keyword: 樹、土、ミミズ、北方林、ツンドラ、バオバブ、登山
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